拘縮予防にナイトブレースとは?急性期から始める回復への一手。
こんにちは。
実は先日、こんなツイートしたら予想以上の反応が…
急性期で全介助レベルの方に対し、拘縮予防にナイトブレースを作りました。病棟の看護師さんも着脱に協力的😌
— ゆろ@PT×2児パパ×駆け出しブロガー (@yuro0822) 2021年6月4日
ナイトブレースに違和感を感じる上司…「(当院で)前例がないでしょ?」と。
そんなことないし、それこそ変えるべき文化なのでは?? pic.twitter.com/5uToeqZCJh
Twitterを始めてからこんなに「いいね」を頂いたのは初めてで、
いくつか質問も頂きました m(_ _)m
思いのほか(私個人的に)盛り上がったこともあり…
拘縮予防を目的とした ナイトブレース についてまとめてみました。
ナイトブレースとは?
決まった定義があるかは不明ですが、
☑ 患部の保護、固定(体幹のダーメン一体型ナイトブレースが有名ですね)
☑ 痙縮などに対する拘縮予防
※痙縮:筋肉が過剰に突っ張った、活動している状態
※拘縮:皮膚や筋肉など関節の動きが、一定方向に制限される状態
などを目的とした装具であり、
就寝時や安静時に装着するものです。
拘縮予防を目的としたナイトブレース
素材
☑ 外側は固定性の高いもの(プラスチック、金属)
☑ 皮膚に接触する内側は軟性素材(クッション性の高いもの、布性)
構造
☑ 皮膚と広く(面で)接触させる
☑ 通気性をよくする(面に穴を開けるなど)
☑ 必要に応じて固定バンドなど検討
角度調整、フィッティング
☑ 患者さんが苦痛を伴っていないこと
☑ 徒手で動かせる範囲の角度で採型 ※無理な角度は皮膚トラブルの原因
☑ 下肢(足)であれば、関節拘縮に至っていない場合は90° を検討
☑ 装着時に隙間(装具内での遊び)がないように
ナイトブレース作製に関して、
内容は義肢装具士さんと共に判断することをお勧めします。
実際、こんな方に作ってます
拘縮予防を目的としたナイトブレースはこんな方に作っています。
上肢(手)の場合
☑ 痙縮などが原因でずっと指を握っているような状態の方
☑ 手指衛生が保てない方(発汗や垢、爪による創傷)
下肢(足)の場合
☑ 痙縮などで足首がピーンっと伸びきってしまう(尖足状態)
☑ クッションを添えるだけではコントロールできないほどの足の突っ張り
☑ せき込み、あくび、ちょっとした接触で持続的に突っ張ってしまう
☑ 意識の有無は問わない ※むしろ覚醒が低い方に多く作っています。
発症後間もない脳卒中患者さんに感しては、
安静時でも指が食い込むほど曲がったり、
足がピーンっと突っ張るような方は少なく感じますが、
広範囲におよぶ脳の損傷を負った方(脳挫傷など)や
脊髄損傷の患者さんは、
急性期、亜急性期の段階から上記現象を伴う場合が多くあります。
急性期、亜急性期ならばこそ早期拘縮予防に取り組むべく、
積極的に作製を検討しています。
ナイトブレースに対する所感
ナイトと言いつつ…
ナイトブレースだから就寝時に装着するもの…
これは間違いではありません。
ゆえにナイトブレースです(笑;堂々巡り)
ただ、後述しますが、
何時間も、それこそ一晩中装着しているのはしんどいし、
皮膚トラブルにつながりかねません。
ゆえに、日中の臥床時間なども含めて、
断続的に、かつ可能な範囲で持続的に装着する装具と認識しています。
普及率の悪さ
正直、普及してない!
一方で、拘縮は防ぐべき難敵であることは誰しもが認識している…
つまり…
ナイトブレースという概念がない?!
もしくは、病院や施設で作製するという文化がない?!
と、いうことなんだと思います。
実際にツイートに対しても、
概要に関する質問をいくつか頂きました。
興味をもってもらえて本当にうれしく思いました m(_ _)m
ナイトブレースによるMDRPUと対策
医療関連機器圧迫創傷(MDRPU)
医療関連機器圧迫創傷(MDRPU)とは、
医療関連機器による圧迫で生じる皮膚ないし下床の組織損傷であり、厳密には従来の褥瘡すなわち自重関連褥瘡と区別されるが、ともに圧迫創傷であり広い意味では褥瘡の範疇に属する。
引用元:日本褥瘡学会学術委員会および用語検討委員会による協働定義
そしてこの医療関連機器には、
装具も含まれます。
例えば…
ちょっとした刺激だけで足が持続的に突っ張ってしまい、
装着していた下肢装具への局所的な圧迫が続いて、
数時間後に装具を外したらそこが真っ赤になってました…とか。
この場合に多いのは固定バンドと足の接触部位などですね。
重度のMDRPUを発生させてしまうと、
ナイトブレースはしばらく、
あるいは一生、装着することが叶わなくなります。
「せっかく作ったのにww」 てなことになってしまいます(涙)
そして拘縮は進んでいくのです…(涙)
対策
ナイトブレースによるMDRPUを防ぐための対策は…
☑ 装具を微調整(皮膚との間にスポンジ用の素材を挟むなど)
そして何よりも…
☑ 持続して装着できる時間を見極めること!
これしかありません!!
確認すべきポイントは?
☑ 患者さんのスキンコンディション(乾燥の有無、脆弱性、発汗性など)
☑ 栄養状態(総タンパク量、アルブミン値、摂取カロリー)
☑ 装具装着時のフィッティング(隙間はないか、固定バンドがきつくないかなど)
☑ 痙縮強度
上記ポイントのうち、
何かしらのマイナス要因があるとしたら、長時間の装着は避けるべき!!
そして装着時間はどうやって調整する?
☑ 短時間から開始。小まめに状態確認を。
例えば、装着40分後(別患者さんの治療後)に様子を見に行く。
☑ トラブルがなければ徐々に持続時間を増やしていく。
例えば、1時間→2時間→4時間→・・・
☑ 2~3時間程度のインターバル(Off Time)は必要。
正直、ずーっと装具を着けっぱなしはしんどいと思います。
患者さんの身体的にも、メンタル的にも解放する時間も確保しましょう。
☑ 病棟看護師の協力は必須!!
これがナイトブレースを扱う上で、最も大切な条件と言えます。
夜勤もないリハビリスタッフだけで装具の着脱を断続的に行うのは無理!!
リハビリの時間に加え、
看護ケア、食事(経管栄養含め)など看護師が関わるタイミングも
着脱の切っ掛けにしていただくよう日頃お願いしている体です。
看護師さん連携して着脱するスケジュールはしっかり組みたいですね。
ナイトブレース作製に関して、
義肢装具士さんとの協力は前述した通りですが、
可能であれば褥瘡対策チーム所属の看護師さんなども
相談に加わってもらえると言うことなしですね。
急性期から始める回復への一手
例えば意識がなく、足も突っ張ってしまっているような
重度の運動麻痺を呈している急性期の脳挫傷患者さん。
あるいは四肢を自由に動かせなくなり、
同じように足が突っ張ている脊髄損傷の患者さん。
急性期~亜急性期は安静を強いられ、
立つ、歩くという積極的なリハビリは行えません。
しかし、その患者さんもいずれはその過程に至ります。
例え予後的に歩行獲得が困難だと仮定したとしても、
我々リハビリ職員は「歩けるように」することだけを目的とせず、
体幹の機能向上を図ったり、
姿勢を保つ神経系を働かせたり…
治療戦略として、立位訓練や歩行訓練を選択します。
その時、足が尖足状態で関節拘縮が生じていたら…
踵が床に接地できないほどの関節の制限が生じていたら…
せっかく回復期に移行してもリハビリは後手後手です。
きっともう改善の見込みが乏しい足の関節運動を続けて、
立つ練習は捗らないでしょう…
手も同じです。
片麻痺の患者さんを仮定して、
手指が不随意的に曲がってしまう痙性麻痺を放置してしまうと
最悪、自分の爪が手のひらに突き刺さるほどの拘縮に…
障害のない反対側の手でケアする練習をするにしても大きな阻害因子です。
急性期に拘縮を防ぐことが、
次につながる回復期、生活期の経過を左右する。
そんなケースが臨床では非常に多いのです。
円滑な回復への一手として、
ナイトブレース を検討してみませんか?
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今回のオチ
フォロワーが多い方にとって、
「いいね」100越えは当たり前かもしれません…
しかし、SNS歴1年にも満たない初心者の私にとっては、
少々戸惑いを感じるツイートとなりました(汗)
このツイート一つでフォロワーも20人くらい増えました(嬉)
SNSのすごさを改めて知った今日この頃です…
おかげでこの記事が書けました。
皆さんに感謝 m(_ _)m
気軽に覗いてみてください。